味を表現する日本語

甘味、酸味、塩味、苦味、うま味に続く第六の味覚「カルシウム味」というのが最近発見されたというニュースがあった。
ちなみに、旨みというのは日本で発見された味覚のようだが、世界的には一般的ではなかったらしい。

このうま味は4基本味では説明できないため、日本ではこれを基本味とする認識が定まった。しかし西洋では長らく4基本味説が支持され続け、うま味が認められたのは最近のことである[3]。現在では甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが化学受容体を介して膜電位の活性化を引き起こしていると考えられており、生理学的にはこの5つが味覚であるといえるため、五基本味と位置づけられる。

Wikipedia 「味覚」項より

しかしこの「基本味」だけでは味は到底表現できるはずもなく、味を表す表現は非常に多い。
野菜のアク抜きができていない時の「えぐ味」とか、ビールの味とかにも使われる「雑味」とか「コク」「キレ」とかいうのも、具体的にこれだ!という例を挙げにくく、それだけに同じ言葉で指しているものが本当に同じ感覚なのかどうか怪しい。ましてや「まったり」とか「シャッキリポン」という言葉が何を表しているのかなど、一般的に共有さえされていないだろう。

雑味ってどういう意味でしょうか?
こういう質問が。実際、客観的に厳密な定義というものはない、というよりも、要するに「クリアでない味」という意味で、例えば、ある統一のとれたスープに対して、それには必要でないものが混ざった時に、その「統一のとれたスープ」に対する「雑味」として表現される。つまり、何か具体的に一対一に対応する表現ではなく、それこそ(やや大雑把だが)「おいしい」「まずい」という表現に近い表現ではないかと思う。
「旨味」「コク」「キレ」というのも、簡単に表現できるものではないだろう。「旨味」というのはそれこそグルタミン酸ナトリウムなどの旨味成分によって喚起される味覚で、「コク」とは、水っぽくない濃厚な味わいというニュアンスがある。「キレ」というのは、後味が残らず、しつこくない味わい。たとえば砂糖や醤油などの調味料をそのまま舐めてみたら、その時に感じる味わいは「キレ」とは対極にある感覚だろうと思う。特に砂糖の味というのはキレが悪い。旨み調味料もしかり。身近でキレのよい味わいというのは、麦茶とかそんなものしか思いつかないな。どっちかいうとスープや飲み物などの液体の食べ物に使われる表現なのかもしれない。

それはともかく、そもそもこれだけ食材が大量に存在し、それらの味は千差万別であるのに、味を簡単に表現できるはずもなく、しっくりした表現のない味というのは、別に高級食材でなくても身近に存在している。

例えば味噌汁の味を言葉で上手に表現しろと言われても、たぶん普通の人には無理だろうし、普通のひとじゃなくてもアナウンサーやタレントや大学の先生方であっても難しいだろう。発酵食品である味噌の香り自体が相当複雑で奥深いため、これを丁寧に表現しようとするだけでも手を拱く。味覚をうまく伝えられるようになるのは詩人のスキルが必要な気さえする。