王威

とある朝、大そう温順な人たちの住む国で、目の覚めるほど見事な容姿の男と女が、広場に立って叫んでいた、「諸君、僕はこの女(ひと)を王妃にしたいんだ!」「わたしは王妃になりたいんです。」彼女は笑ったり、わなないたりしていた。男は人々に、天のお告げのことや、試練に堪えてきた顛末を言い立てていた。ふたりは身を寄せあって恍惚(うっとり)となっていた。
事実、ふたりは王者だった、家々に緋ののぼりが立ったその日の午前中も、ふたりで檳榔樹の園の方へ歩いた午後の間も。

Arthur Rimbaudの詩です(堀口大學訳)。ランボーは高校の頃に知って、とりあえず新潮文庫の薄い詩集だけ買ってよく読んでいました。
最近周りで結婚する人が多いのですが、この詩は結婚を祝う詩として凄くマッチしているような気がして、ここに載せておきます。
ちなみに檳榔樹とは椰子の一種のようで、フランスでの情景を想像すると違うんでしょうね。ランボーは晩年はエジプトなどにも訪れているらしいので、その経験が反映されているのかも。
もっとも、この詩が収録されている詩集"Illuminations"が発表されたのは1886年とはいえ、完成したのは1874年ともいう。実際のところは神のみぞ知るといったところか?