日光・丸沼旅行

1日目:東武日光駅周辺、日光街道

東武亀戸線亀戸水神から曳舟東京スカイツリー→特急スペーシアけごんで東武日光駅に向かう。スペーシアけごんは乗った当初はそれほどでもなかったと思うのだが、進むに連れて車中が異常に寒くなり、パーカーにマフラーをつけてなんとか凌げるレベル。2日目に泊まる丸沼が標高1500mほどの場所で、白根山のロープウェーの山頂駅は標高2000mに達するということで、気温ががっつり下がることは想定していたので、防寒を意識した服装を用意してきて助かったが、実際のところ旅程の中でもっとも寒かったのがこの特急の中だった。

東武日光についたのは13時半頃だっただろうか。ホテルに荷物を預けて、日光街道を散歩。駅前の「揚げゆば饅頭」は饅頭の天ぷらを塩で食べる感じで、塩気がちょうどよくて大変美味しかった。以前、那須塩原駅前の明治屋で買ってみて大変美味しかった柏崎商店の実山椒を買いたかったのでお店まで歩いていき、店主のおじいちゃんの営業トークをひとしきり伺い、実山椒*1、粉山椒、お茶漬けを買う。店主は、山椒で減塩できる!とおっしゃっていて、どういうメカニズムかと思えば粉山椒を舐めることで味覚が鋭敏になり、砂糖もより甘く、塩もより辛く感じるようになるから、とのこと。「アメリカンがブレンドになる」と言っていたのが印象的だった。その後付近を歩き、たまたま見かけた宮前だんごで大変美味な醤油だんごと味噌+黒砂糖団子、またイチゴのかき氷、抹茶をいただいて大満足。ここの醤油団子もまた炭火で焼き立てで、醤油の加減や香ばしさも絶妙、だんご自体の味わい、サイズ感、柔らかさ、食感、どれをとっても誇張なしで人生最高の団子だった。その後、日光プリンとかたまり漬けとかをいろいろ買ってホテルに戻った。なお、たまり漬けの店で見かけた「しそ巻唐辛子」が初見だったので買ってみたのだが、しその香りが非常に高く、塩分、唐辛子のバランスがよく、これは掘り出しものを見つけたという感じだった。帰宅してから細かく刻んでご飯にかけたりキャベツサラダにしたり、鍋の薬味として使ったりと地味に大活躍している。たまり漬けは水で洗って塩味を抜かないと食べられないのでは、という程に醤油と砂糖の味が濃くて当初閉口していたので、それに対してこのしそ巻唐辛子の上品さには驚かされた(たまり漬けはみじん切りにして適度な量を食べるとしみじみ美味しかったので、食べ方がわかっていなかっただけかも)。

東武日光からは、そばやかき氷を食べに電車で今市の方まで出る計画を立てていた。しかし朝出るのが少し遅れたため、時間がなく天気も悪かったので、初日の残り時間はホテルでテレビを見てのんびり過ごすことに。駅で駅弁を2つと、さかえやでわさびと醤油をつけて食べる「生ゆばの刺し身」を買ってホテルへ撤収。生ゆばの刺し身は思った以上に美味しく、自分達へのお土産として最終日にも購入することになった。

駅弁は少なかったので追加のおにぎりを買ってきて、ホテルに借りたマグカップで柏崎商店で買った茶漬の素と実山椒でお茶漬けを作って食べたが実山椒は記憶以上に絶品だった。

2日目:いろは坂華厳の滝中禅寺湖〜丸沼

前日夜は時折小雨が降っていたが、朝は曇り空ながら雨は降っていなかったのはラッキーだった。ホテルの朝食を済ませると、早めにチェックアウトして駅前のレンタカーで車を借りて華厳の滝へ向かう。途中、有名な「いろは坂」を通った。上りと下りでそれぞれ一方通行の一車線のみ、対向車を気にせずに走れるアップヒルダウンヒルということで、エキサイティングなヘアピンカーブが間髪入れずに畳み掛ける。宮城蔵王十和田湖(青森)でヘアピンカーブを走るコツは多少身についたと思う*2。カーブ内側のライン(右折ならセンターライン、左折なら路側帯のライン)を目印にすると、ラインを踏まずに攻略できる。

ほどなく華厳の滝に到着し、落差100m弱の巨大な滝の姿を拝んだ。昼食についてはあまり考えておらず、中禅寺湖か温泉で…と考えていたのだが、華厳の滝はさすが観光地だけあり、イワナの炭火焼き、すいとん、ゆばコロッケ、玉こんにゃくなどいろいろな食べものが売っていて、いろいろ摘み食いしていたら結構お腹がいっぱいになってしまい、なし崩しに昼食を終えることとなった。腹ごなしに中禅寺湖まで歩いた。「標高1000m以上の湖」ということだったが、湖以上にバイクの暴走族みたいなのが爆音で走っていたのがむしろ印象的だった。彼らはやはりいろは坂ダウンヒルを攻めるのだろうか。お土産店にも日光彫や益子焼など面白そうなものはあったので、じっくり時間をかけて吟味したのだが、結局ピンとくるものは見つけられず、大きな買い物せずにすぐに駐車場に戻った。

元々温泉や足湯などに寄ることを検討していたのだが、疲れたこともあり、丸沼のホテル(環湖荘)に早く行って休もうということになった。自分としては、ホテルに行ってからはまたその辺を散策したり車でドライブしてもいいかな、とは思ったが、国道120号からほぼ180度「右折」して下りの細道に入ると、舗装はされているとはいえ再びカーブが繰り返される山道が続き、丸沼にたどり着いてみると周囲を山々に囲まれて他の車道もなく、その山道だけが入り口であり出口で、一旦入ると出るのにも時間がかかるという外界から隔離された空間になっていた。

山に囲まれた湖のほとりに環湖荘はあり、車を降りると華厳の滝周辺や中禅寺湖とはまた全く違うさわやかで涼しい山の空気に包まれ、まるでお金持ちの避暑地の別荘みたいだ、とテンションが上がった。旅館もそれなりに歴史はあるのかと思うが立派できれいな建物で、田舎臭さや古臭さみたいな要素は微塵もない。

日曜日だったこともあるかもしれないが、駐車場にも殆ど車は止まっていなかったし、お店はレストランは一軒あるようなのだが営業もしておらず、当然コンビニも自動販売機もロクにない。湖を臨むカフェとかお土産屋さん、釣り具店もない(釣りの許可証やルアーなどの釣具は環湖荘で扱っていたようだ)。釣り人や観光客が沢山いればまた雰囲気は違っただろうが、あまりにも人が少ないのに、こんな立派な旅館があることには、まるで狐か狸に化かされているんじゃないかと思えるほどの違和感があった。

まだ太陽が高かったので、丸沼のほとりを散策してみたのだが、湖ほとりの広場には何らかの動物の巨大な糞が異様に大量に散らばっていることに気づいた。鹿の糞のようなものならまだマシだと思うのだが、人間のそれ並にでかく、しかもひとつや2つではなく10以上は散らばっていた。それ自体不潔だし、一体どんな野生動物が(野生以外に考えられない)、いつ、ここに来て糞をしたのかということを考えると呑気に散策する気持ちはかき消えてしまった。熊だと洒落にならないし、このサイズだと熊でなくても相当の体の大きさで、偶然遭遇でもしたらただでは済まないだろう。ネットでも調べてみたら(環湖荘には無料Wi-Fiはあった)丸沼高原のキャンパーが動物の糞に苦言を呈していたレビューが見つかったのでこの辺りは多いのかもしれない。自分の中ではイノシシの糞という仮の結論にたどり着いたが、真相は不明である。

また、後から気づいたのだが、これだけ豊かな自然があり、9月上旬の残暑のシーズンであれば、鳥の鳴き声や虫の声などがうるさいくらいに響いていてもおかしくないと思うのだが、不思議なくらいに静かで、この季節なら鳴いているはずのセミの声も一切聞こえてこない。ただ川の水が流れる音ばかり。標高が高いというのはそういうことなんだろうか。

部屋は広々としていて畳敷きで古き良き旅館という感じ、ただそこまで古い感じはせず、メンテは非常にしっかりされている模様。夕食は豆乳鍋やお刺身、岩魚の炭火焼きなどが出されて山の幸を美味しくいただいた。過去の旅行では海の近くの宿に泊まることが多く(一昨年の鳴子などはかなり例外的だった)、海の幸メインの食事が多かったことを思い出した。我々の旅行の質も変わってきたものだ。

夜、完全に日が落ちてからの部屋は本当に静かで、窓を開けるとひんやりした空気が流れ込んできた。ただ寒いという程でもなく、とても涼しい、という程度、これぞ高地の爽やかな夜気という感じだった。それにしても夜になったら聞こえるだろうと思っていた秋の虫も全く鳴いていない。気温が低すぎるということ?

3日目:日光白根山、菅沼、いろは坂下り、日光杉並木

3日目は日光白根山のロープウェーに乗って軽く散策する予定だったので、チェックアウトしてから高原の駅の駐車場に車を停めてロープウェーに乗り込んだ。全長2500m、標高600m分を登るロープウェーで、搭乗時間は15分程。午前中の空気はまだ冷たく、登る途中に周辺がガスってきて完全に視界が白に閉ざされた時間もあったが、山頂駅に着いたら雲を突き抜けた青空が見え、日差しが強く汗ばむ陽気だった。気温はそこまで高くはないのだろうが、直射日光は強烈だ。ロープウェーの揺れでごく軽い乗り物酔いの症状に襲われていたが、山頂の森の空気は高級なお茶のような芳香で、自然の恵みと凄さを、嗅覚でここまでダイレクトに感じることはなかなかないのではないか。天国に登ったような心地だった。登山エリアは野生動物生息地域なので、鉄の門で閉ざされていて、通る時には都度施錠しなければならないというルールがある。当然熊も出るらしいので、少々肝が冷えたが、同時にこの空間の素晴らしさには抗えない魅力があった。ずっと歩いていたいくらいだったが、暫く散策して戻った。いつか、ここから日光白根山の山頂まで登山してみたいと強く思った。

下りのロープウェーでは、ガスも晴れて空も晴れ、青空と山の緑のコントラストが美しい風景を楽しむことができた。道の駅に行きたかったのだが、高原の駅は売店は開いていないようで、菅沼の山小屋というところに行くことにした。車を日光方面に少し走らせるとすぐに到着。ここはお土産も充実して、軽食なども取れたので暫くここでお土産を選んだり、そばを食べたりとゆったりした時間を過ごした。「山小や」という名前だが、国道に面していて、広い駐車場を備えている小さめのサービスエリアといった感じ。ただ建物自体は木造で雰囲気のある山小屋といった風情で、ここで過ごす時間はなんとも穏やかでよかった。店員さんも優しかった。イワナの炭火焼きは一旦諦めていたが、ヤマメとオショロコマの炭火焼きが売られていたのは望外だった。

工房西岡」という埼玉県の工房が、光沢のある動物や魚の小さいフィギュアを作っているらしく、他にもいろんなところで見かけてはいたのだが、ここの売店にはひときわ多くの木工品が販売されており、岩魚の魅力的なフィギュアが置かれていたので一目惚れで購入してしまった。このニスのような光沢と、曲面を生かした木工は魚モチーフがぴったりで、作風そのままでとてもリアルに見えるのだ。川魚の炭火焼きは今回の旅行で3回食べる機会があったがどれも本当に美味しかった。蔵王の釣り堀で釣って食べたニジマスを思い出したが、やはりプロが焼いた炭火焼きは一段上の美味さだ。

その後、特に温泉等にも寄らず東武日光駅に向かった。少し時間に余裕がありそうだったので、ニコニコ本陣という道の駅に寄りつつ日光杉並木も歩いてみることにした。ただその前に、いろは坂の下りを体験することができたのは非常によかった。スピードが出やすい下り坂でのヘアピンカーブの連続は上り以上にエキサイティングで、30年前にF-ZEROでやっていたアウト・イン・アウトのライン取り*3実車でやることになるとは思っても見なかったので、感慨深かった。カーブのところでは30kmくらいまで減速させないと曲がりきれない技術力だが、それでもちょっとしたジェットコースターよりも(当然?)遥かに長く、楽しい経験だった。

無事標高530mの東武日光周辺まで下ってきた。ニコニコ本陣(ニコ動と何か関係が?と思ったが、単に「日光」とかけているだけと思われる)という名前の道の駅は市街地に位置し、町中のスーパーのような感じ。果物、お菓子、野菜などいろいろ取り扱っていた。ここで買ったパック入りのシャインマスカットが超絶甘くて驚いた。シャインマスカットを文字通りバラ売りしているパターンが自宅近辺では出会ったことがないので、680円程度で15粒くらい?食べれるならむしろお得に思える。旅のお供には、変なものを買うよりもよっぽどいいのではないか。

杉並木近くの駐車場に車を止めて少し散策。この杉並木が歴史を眺めてきたもので、同じ道を江戸時代の町人もまた歩いていたのかもしれないが、延々杉の大木が立ち並ぶ風景が続くだけ。地元の人が犬を連れて散歩している地元の人には何人か出会ったが、そういう散歩コースとしてはぴったりだと思う。

杉並木の近くに巨大な水車を備えた小屋があった。水車自体見たことがないわけではないがそこにあったものは特別に大きく、川の流れに従って力強く回っていた。水車に繋がれた石臼がそばの実を潰すのに使われていたものとのこと。その場所では蕎麦が食べれるわけではなかったが、石臼がどのように回っているかも見ることができたので、水車のパワーを実感できたのは収穫だった。駅に戻って車を返すと、お土産を買って特急に乗り込み、日光と丸沼の旅は終了。3日目は慌ただしかったが天気にも恵まれ、この旅行も尻上がりに充実していったと感じる。

*1:もちろん生ではなく、炊いて味付けしたもの。醤油漬けでも佃煮でもない

*2:というかレンタカー借りるとこんな道ばっかり走ってる

*3:現代ではもはや廃れたドライビング技術らしい…